家を建てるときによく聞く「換気システム」。
人が住む上で換気はとても重要な役割を担っていますが「そもそもなぜ必要なのか」をご存知でしょうか?
そして、換気システムがどのような働きをしているのか。
本記事では換気システムの疑問点を解説し、すっきり解決いたします!
なぜ第三種換気システムを推奨するのかを分かりやすく掘り下げてまとめました。
目次
換気システムとは?
近年の住宅には必ず設置されている換気システム。
あまり目立たず、本当に必要なのかなと疑問に思う方も中にはいるでしょう。
換気扇もあるし、窓もあるし、換気システムがなくても大丈夫だろう。
「換気」は充分できるのではないかと。
ですが、いわゆる「換気」と「換気システム」は目的が違うのです。
一昔前の住宅には隙間があり、ある意味適度な風通しがありました。
しかし、近年の超が付くほどの高気密高断熱住宅では、「換気システム」の計画を疎かにすると人体に悪影響を及ぼすリスクがあります。
法律で定められるほど、大変重要なのが計画換気「換気システム」なのです。
計画換気が重要とされている理由は主に2つ
- 高気密高断熱住宅が標準となっているから
- 法律で定められているから
換気をする目的は「こもった空気を外に出す」「外の新鮮な空気を室内に取り入れたい」などがありますよね。
でも、なぜ空気がこもっていると感じ、なぜ外の空気を室内に取り入れたいと私たちは感じるのでしょうか?
それは「空気が汚れている」からと考えられます。
この汚れている空気と言われるものは2種類あります。
汚れている空気の種類と、人体に及ぼす害について
1つは、粉塵やホコリ、花粉、黄砂、ダニ、ウィルス等の粒子や物体が含まれたもの。
これらは人体に病気やアレルギーといった悪影響を与えます。
ダニやホコリによるアトピーや、花粉などによって生じるアレルギー症状は、前述した粒子が原因で人体へ悪影響を及ぼしています。
もう1つは、一酸化炭素や人体から排出される二酸化炭素など、ガスに含まれる燃焼系の気体や、有害化学物質の気体です。
気体によって症状は変わりますが、これらは一定数以上を人体に取り込んでしまうと体調が悪くなる原因となります。
法律ではどのように定められているのか?
2003年に住宅の品質管理確保の促進等に関する法律(品確法)のシックハウス対策で、1時間当たり2分の1以上の家の中の空気を換気しなくてはいけない法律が施行されました。
主に居室や換気経路となる廊下・トイレなどを含めた住宅の大きさ(容積)に応じた換気量を持つ換気システムが必要になります。
この換気システムで2分の1以上の換気を確実に行うことがあげられます。
この法律が出来た背景としては、近年の高気密の住宅が昔の日本家屋のような隙間がある建物ではなくなったことで、建築資材から出る化学物質(ホルムアルデヒドなど)が家の外へ排出できなくなり、体調不良を訴える人が多くなったことがあげられます。
換気が重要とされている理由はこれで理解出来ましたが、これらの換気システムにも3種のタイプがあります。
それでは、どんなタイプがあるのかを見てみましょう。
24時間換気システムとは?
24時間換気システムとは、機械換気設備のことです。
法律で設置が義務付けられています。
機械換気設備は給気と排気のいずれか、もしくは両方を機械によって行うものです。
機械による給気と排気の組み合わせで第一種、二種、三種換気システムに分類されます。
第一種換気システム
機械で給気し、機械で排気をするシステムです。
給気と排気に機械を利用することで、換気をコントロールする方法です。
メリットは、外の気温を室内の気温になるべく近付けて取り込める点です。
熱交換型換気装置を利用します。
デメリットは、設置が大がかりになることと、初期費用が高くなってしまうこと。
装置本体が高額なのです。
また、自分で清掃を行うことが難しい部分もあります。
業者にお願いしたり、フィルター交換費用も第三種換気に比べると高いなど、メンテナンスもとても大変です。
大まかな予算とメンテナンスの詳細を視野に入れて検討をする必要があります。
第ニ種換気システム
機械で給気が出来て、自然に排気が出来るシステムです。
機械給気をすることで、室内側に外の空気を強制的に取り込みます(正圧状態と言います)。
室内にはいつでも新鮮な空気がたっぷりと満たされる環境を作ることが最大のメリット。
第一種と第三種のいいところを取った理想的なシステムではあるのですが、大きなデメリットがあります。
それは、強制的に給気された空気が室内に満たされるので、湿度の環境もそのまま影響を受けてしまう点です。
梅雨時期の湿った空気や、冬の冷たくて乾燥した空気をそのまま室内に取り込んでしまうことになります。
主に手術室や無菌室などのクリーンルームに用いられるシステムで、住宅で採用されることはほとんどありません。
第三種換気システム
自然に給気し、機械で排気をするシステムです。
建物のリビングや寝室などの居室に給気口を設置し、換気扇で排気します。
空気が常に外へ排出されるので、室内の玄関ドアが開きにくくなります(負圧状態と言います)。
よって一種換気ほどの気密性能を必要としないにしても、気密状態(気密住宅)であれば、風の影響を受けることなく計画された換気を確実に行える点がメリットです。
更に、換気のシステムがシンプルなため設置費用も安く、メンテナンスは比較的容易です。
デメリットは、室内の空気を強制的に外に放出するので、寒い日は給気口から冷気が入りやすい点です。
給気口からの給気量の調節や、新築であれば換気経路や換気計画を含めてしっかりと平面計画を立てることが大切です。
住宅はとても高額な買い物です。
だからこそ「こんなはずじゃなかった!」という後悔がないように、初期費用や運用費を考慮しなければいけませんね。
第三種換気システムを推奨する3つの理由
お伝えした通り換気システムには3種類ありますが、その中でも弊社がおすすめしているのが第三種換気システムです。
- シンプルな設計になっているため、メンテナンスが楽→設置も他のシステムと比べて容易!
- 換気システムの設置費と、日々かかる電気代が圧倒的に安い!
- 通風管は排気のみの一方向のため、カビや結露が発生しにくい!
第一種と第三種換気システムのどちらが良いのか、デメリットもあわせて様々な観点から検討してみましょう。
(※住宅にはほとんど使用されない第二種換気システムは除きます)
①設置がシンプルだからこそメンテナンスが楽
第三種換気システムは仕組みがシンプルです。
通風管を使用する場合でも排気にしか使用しないため、痛風管の中にカビや結露が発生しにくい利点があります。
第一種換気システムは、第三種に比べて通風管の中にカビが発生しやすい環境です。
メンテナンスを怠ると汚れた空気が部屋の中に広がってしまいます。
メンテナンスと掃除を充分に行わなかった場合、第一種換気システムが人体に与えるリスクは大きいです。
②構造がシンプルだから月々の費用が安い
第三種換気システムは構造自体がシンプルなため、月々の運用費も安価です。
第一種換気システムは構造が複雑でエネルギーを消費するため、毎月の電気代も第三種の約3倍の運用費が必要です。(※建物の大きさによります)
③室内の空気が壁の中に入りにくいため内部結露が発生しにくい
これは、家の中が負圧状態になる第三種換気システムだからこそ作れる環境です。
第三種換気システムは機械を使って強制的に空気を外に出しますが、第一種換気システムは給気と排気を機械で同時に行うため室内の空気には負圧や正圧がかかりません。
気密性能が不足している場合は外気の影響をダイレクトに受けるので漏気量が多くなります。
その場合、第一種換気システムの特徴でもある熱交換の恩恵を受けることができず、本来の換気システムが不安定になります。
弊社では通風管(ダクト)式第三種換気システムを推奨しています
換気システムについてまとめました。
「24時間換気システムを取り入れたいけど、どれがいいのかわからない!」といった方の一助となれば嬉しいです。
ここまでそれぞれの換気方法やシステムをざっくりと解説してきましたが、弊社では通風管式第三種換気システムを推奨しています。
ただし、換気システムは建物の断熱・気密の性能や工法、時には周りの環境を加味して最適なものが設計に取り入れられるので、どれが一番優れているとは一概には言えません。
それぞれの特性を知り、メリットを生かし、デメリットの補い方の知識を持つことが大切だと思います。
換気計画を含めた新築計画でしっかり換気することがよりよい住まいづくりにつながります。
あまり目に触れるものではありませんが、見えないところだからこそ、メリットとデメリットをしっかり理解して、賢く導入しましょう!
監修・執筆
コウキ / 設計・デザイン
トライでは、お客様の思いや理想に重きを置き、住まいづくりを進めていきます。 “自分だけの暮らし方”を楽しみながら一緒にカタチにしていきましょう。